個人再生後の生活で気をつけるべきこと
借金で困った人の強い味方となるのが「個人再生」手続きです。
個人再生に成功すれば、借金を大幅に減らすことができます。
しかし、個人再生した後の生活はどのようなものになるのでしょうか?
個人再生後の生活が不安なせいで、個人再生に踏み出せない人もいるかもしれません。
ここでは、個人再生をした後の生活について解説していきます。
正しい知識を持てば過度な不安は必要ありません。
個人再生をしようと思っている方は、どうぞ本記事を参考にしてください。
このコラムの目次
1.そもそも個人再生とは?
個人再生は、裁判所に申立てを行って手続をする債務整理の一種です。
借金を概ね5分の1~10分の1に減額してもらったうえで、それを3年程度(場合によっては4年、5年)かけて毎月少しずつ返済していきます。
個人再生の手続中は債権者からの督促や差し押さえが止まりますし、個人再生がうまくいけばその後の生活が一気に楽になります。
また、持ち家を処分することなく債務整理ができる可能性があるのもメリットです。
たとえ住宅ローン支払い中の持ち家がある場合でも、住宅ローン特則という制度を使えば処分を免れます。
自己破産のデメリットの多くから解放され、任意整理よりも大きな減額効果が得られるのが個人再生なのです。
2.個人再生が生活に及ぼす影響
ここからが本題です。
個人再生がうまく行って借金が減額されたとして、その後の生活はどうなるのでしょうか?
(1) ブラックリストへの登録
個人再生をすると、そのときの債権者であるカード会社や銀行などが、「この債務者は個人再生をしました」という事実を「信用情報機関」という組織に登録します。
融資やクレジットカード発行の申込みを受けた銀行やカード会社などは、審査の際に信用情報機関の情報を参照します。
そこで「個人再生をした」という事実が判明すると、銀行やカード会社は「この人は個人再生をした過去があるので、返済能力に問題があるはずだ」と考えます。
結果として、融資やクレジットカードの発行を断るという判断を下すのです。
個人再生をしてから5年~10年程度は信用情報機関に個人再生の情報が残り続けるので、この間は借金やクレジットカードの利用がほとんどできないと考えてください。
(2) 返済額が減るが返済は続く
前述の通り、個人再生は借金を大幅に減額できる制度です。
しかし、減額できるとはいえ、返済は続けなければなりません。
個人再生では、裁判所に「再生計画」という、返済計画のようなものを提出し、それを認可してもらう必要があります。
もし再生計画に従った返済ができない場合、債権者が再生計画の取り消しを裁判所に求めるかもしれません。
仮に取り消しが認められた場合は、減額したはずの債務が復活し、債務全体の一括返済を請求されることになります。
個人再生後は返済を滞納しないように、細心の注意を払うようにしてください。
特に「住宅ローン特則」という、住宅ローン支払中の持ち家を手元に残せる制度を使った場合は、住宅ローンについては基本的に減額がありません。支払いスケジュールをリスケしてもらえる程度に留まるでしょう。
住宅ローン以外の借金、例えばクレジットカードの利用で作った借金などは減額してもらえるので、日々の支払いは大幅に楽になりますが、住宅ローンの支払いについてはそのままなので、借金の内訳次第では劇的な効果が現れないかもしれません。
もちろん個人再生後に住宅ローンの支払いを滞納すると、一括返済を求められる事態になりかねないので要注意です。
(3) 仕事には影響がない
自己破産の手続中は、士業など一部の仕事に就くことができなくなります。
しかし個人再生の場合、そのような決まりはありません。
そもそも個人再生は一定の収入が将来にわたって継続的・反復的にある人でなければ認められません。
個人再生をすることで仕事に悪影響があるようでは、債務者の救済にならないのです。
また、個人再生をしても、基本的に勤務先にバレるようなことはありませんし、報告する義務もないので安心してください。
勤務先から借金をしていた場合はバレてしまいますが、それ以外の場合は自ら債務整理の事実を告げない限り大丈夫です。
仮にバレたとしても、個人再生を利用とした解雇は「不当解雇」に該当します。
このため、勤務先も個人再生をした従業員を解雇できないのです。
ただし、「個人再生をする=借金で困っている」というイメージを持たれる可能性はゼロではありません。
多額の現金を扱うような部署から別の部署に配置換えをされてしまうかもしれないので、この点は注意が必要です。
(4) 基本的に財産を没収されることはない
自己破産をすると一定以上の財産は処分の対象として没収されてしまいます。
しかし個人再生では、基本的にそういったことはありません。
例外はローン支払中の車などです。
ローンを支払中の車の所有権は、多くの場合ローンの債権者にあります。このためローン支払い中に個人再生をすると、ローンの債権者が車を回収してしまうのです。
所有権がローンの債権者にない場合は安心なので、契約がどうなっているのか、車検証の所有者が誰になっているのか(自分名義かローン債権者名義か)を確認しておきましょう。
また、カーリースをしている場合も、リース車は引き上げられてしまいます。
もし車を手放したくない場合は、弁護士に相談してみましょう。
運送業や個人タクシーなど、車を使うことで直接収入を得ているような場合は、例外的に車の処分を免れることができるかもしれません。
(5) 繰り上げ返済や一括返済が可能
個人再生後は、裁判所によって認可を受けた再生計画に従って返済していくことになります。
これに遅延することはできませんが、早く完済するために繰り上げ返済や一括返済をすることは可能です。
しかし、それによって生活が苦しくなった結果として再生計画に則った返済ができなくなってしまうと、債権者から一括返済を求められてしまうかもしれません。
一刻も早く返済したい気持ちがあるのはわかりますが、無理をすると取り返しのつかない結末が待っているおそれがあります。
無理のない返済ができるよう、慎重に計画を立てることを強くおすすめします。
3.個人再生によるデメリットは意外に少ない!
個人再生をしても、それが生活に大きな悪影響を及ぼすことは少ないです。
クレジットカードが使えなくなる、融資が受けられなくなるなどは大きなデメリットかもしれませんが、借金をしない生活に慣れて経済的に自立するいい機会と考えてください。
個人再生によって仕事を失うことはありませんし、財産を処分する必要も基本的にありません。
例外的にローン支払中の車などは手放すことになるかもしれませんが、ローン会社との契約次第なので、絶対にアウトというわけではありません。
もしも不安なことがある場合は、個人再生の前にぜひ弁護士へ相談してください。
弁護士なら、個々のケースに合わせて具体的なリスクやデメリットを説明してくれます。
借金で生活が苦しいまま一人で悩んでいるのは時間の無駄です。できるだけ早く弁護士に相談して、不安を取り除くことをお勧めします
個人再生をお考えの方は、ぜひ、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
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