自己破産後に賃貸借契約は結べるの?
借金が増えすぎて支払いがどうしてもできないとき、自己破産をすれば借金をほとんど全て免除してもらうことができます。
しかし、自己破産はメリットが大きい代わりにデメリットも大きい制度で、例えば、手持ちの財産は必要最低限のものを残して処分されてしまいます。
折角手に入れたマイホームも明け渡さなくてはなりません。
マイホームを手放すとなると「自己破産をした後に新たに賃貸住宅を借りることができるのか?」と、住まいについて不安を感じている方もいることでしょう。
マイホームを持っていなくても、アパートやマンションの賃貸借契約をしている方で「自己破産をしたらここには住めなくなるのでは?」と心配している方も多いことでしょう。
万が一、自己破産により住まいを失い、露頭に迷うことになったら一大事です。
果たして、自己破産をしたあとに賃貸借契約は結べるのでしょうか?
また、今の賃貸借契約はどうなってしまうのでしょうか?
このコラムの目次
1.自己破産による今後の賃貸借契約
まずは、自己破産後に賃貸借契約を結べるかどうかを見ていきます。
(1) 自己破産をしても賃貸借契約は結べる
結論から言えば、基本的に自己破産をしても賃貸借契約を結ぶことは可能です。
ただし、賃貸借契約を結ぶときには「審査」があり、場合によっては自己破産が理由で審査に落ちることもあります。
一体どのようなときに審査に落とされてしまうのでしょうか?
オーナーによる審査
賃貸物件のオーナー(大家)が審査をする場合は、現状で家賃の支払いに問題がないと見なされれば大抵は審査には通ります。
そもそもオーナーが自己破産をしているかどうか調べることはできないので、自分から言わない限り自己破産がバレることもありません。
保証会社による審査
近年は、賃貸借契約の際に連帯保証人をつけずに、保証会社を利用するケースも多くなりました(保証会社に対して保証料の支払いが必要です)。
賃貸住宅の保証会社は、大別して民間系と信販系の2種類あります。
民間系は信用情報機関に加盟していないので、審査のときに自己破産の事故情報を目にすることはありません。よって、自己破産を理由に審査に落とされることはないでしょう。
しかし、家賃の保証会社が民間系ではなく、信販系の場合は要注意です。信販会社は信用情報機関に加盟しているので、審査の際に事故情報を照会することができます。
自己破産によるブラックリスト入り(事故情報)が判明すれば、審査が通らない可能性は高いでしょう。
ブラックリストの情報が抹消されるのは5~10年です。その間は、新たに賃貸住宅を借りるとしても、保証会社が民間系の物件を中心に探すことをおすすめします。
民間系の保証会社は日本セーフティー、全保連、賃貸保証サービス、フォーシーズ、リクルート、アルファー、カーサなどたくさんあるので、賃貸借契約を結ぶ前に必ず保証会社の名前を聞いて、事前にチェックしましょう。
「そもそも、自己破産後に引っ越しができるのか?」という疑問をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、この点については心配無用です。
自己破産には同時廃止と管財事件があり、同時廃止の場合は特に引っ越しに関する制限はありません。 一方、管財事件の場合は、勝手に引っ越しをされると手続きが煩雑になることから、自己破産手続き中は引っ越しが制限されます。
ただし、転居をしてはいけないということではなく、裁判所の許可があれば転居はできます。手続も難しいものではなく、裁判所にある「住所変更の届出」と住民票を提出すればOKです。
引っ越し制限をされるのは開始決定から破産手続終了までですので、期間としては長くても半年ほどであることが多く、その後は自由に引っ越し可能です。
2.自己破産による今の賃貸借契約
次に、今現在賃貸借契約をしている方への自己破産の影響について解説します。
自己破産で賃貸借契約が解除となる危険があるどうかは、家賃の滞納の有無で変わってきます。
(1) 家賃を滞納していない方
現在、賃貸住宅にお住まいで家賃を滞納していない場合、今後も家賃をしっかり支払えば問題なく済み続けることが可能です。
大家さんからしたら「自己破産をする人が今後きちんと家賃を払えるのか?」と心配にはなると思いますし、借主も信用状態が悪くなることで「契約を解除されるのでは?」と不安になることでしょう。
しかし、自己破産は賃貸借契約の解除、更新拒否をする理由にはならないので、破産後もそのまま住み続けることは可能です。
賃貸借契約を解除または更新拒否できるのは、借地借家法に定められている事由に該当する場合のみで、自己破産はこれに当たらないので安心してください。
(2) 家賃を滞納している方
今現在、家賃を滞納している人については要注意です。
大家さんは、基本的に家賃を3ヶ月滞納した時点で、自己破産の有無に関係なく債務不履行で退去を求めることができます。
家賃3ヶ月の滞納で催告なしで退去を求めることができるとした最高裁の判例もあるので、家賃滞納だけで退去のリスクは高くなります。
また、家賃を滞納している最中の自己破産もリスク大です。滞納した家賃は負債の一部とみなされますので、自己破産をすると滞納分の家賃も免責対象となります。
大家さんも自己破産で滞納した家賃を免除しなければならないのなら、当然引き換えに契約解除を求めてくるでしょう。
とはいえ、住まいを失ったら一大事とばかりに、自己破産直前や手続中に滞納家賃だけ優先して払うのはNGです。
自己破産では「債権者平等の原則」があり、一部の債権者だけに優先的に支払いをする「偏頗弁済」は禁じられています。発覚した場合には原則として免責が認められません。
滞納した家賃がある場合には、まずは弁護士に相談をしてください。
住まいは生活に必要なものなので、場合によっては滞納家賃の支払いをしても偏頗弁済とはみなされない可能性もあります。
ですが、微妙な判断を伴いますので,ご自身だけで判断するのではなく、弁護士に相談したうえで対応するようにしましょう。
3.自己破産をお考えなら弁護士へ相談を
自己破産後も賃貸借契約は可能ですが、保証会社が信販系の場合は要注意です。不動産屋では保証会社についてしっかり尋ねるようにしてください。
また、自己破産が原因で現在の賃貸住宅を追い出されることは原則としてありません。
とはいえ、現在賃貸借契約を結んでおり、家賃を滞納している場合は、どうするべきか専門家に早めに相談をすることをおすすめします。
泉総合法律事務所所沢支店は、自己破産の解決実績が豊富にございます。弁護士にご相談いただければ、自己破産に関する様々な不安を取り除くことができるでしょう。
早めにご相談頂ければ、自己破産以外の選択肢を模索することも可能かもしれません。
自己破産の相談は何度でも無料ですので、どうぞお気軽にご相談ください。
-
2020年10月15日債務整理 債務整理の弁護士費用はどのくらいかかる?
-
2020年1月6日債務整理 自己破産後にクレジットカード(クレカ)は使えるのか?
-
2020年1月9日債務整理 自己破産するには|条件と事前の準備