刑事事件

傷害罪の慰謝料はどう決まる?示談の重要性

「酔った勢いで酒の場の周囲の人に暴力を振るってしまった」
「カッとなって手を上げたところ、相手が予想外に大けがをしてしまった」

このような暴力事件を起こしたら、相手から被害届を出されて逮捕される可能性があります。

逮捕を避けるには早めの示談が重要ですが、示談のための慰謝料はどのくらい支払うことになるのでしょうか?

実は、暴行罪や傷害罪の慰謝料や示談金の金額は、相手のけがの程度によって大きく異なってきます。

以下では、傷害罪を起こしたときの慰謝料や示談金の相場について詳しく解説します。

1.暴力事件で成立する犯罪

人に暴力を振るったりけがをさせてしまったりしたら、どのような犯罪が成立するのでしょうか?
暴力事件によって成立する犯罪には、暴行罪と傷害罪があります。

(1) 暴行罪

暴行罪は、相手に有形力を行使したけれど「けがをしなかった」ときに成立します。
たとえば以下のような場合は暴行罪です。

  • 殴りつけたが幸い無傷であった
  • 相手の胸倉をつかんだ

(2) 傷害罪

一方、暴力を振るったことによって相手が「けが」をしたら、傷害罪が成立します。
たとえば以下のような場合です。

  • 相手を殴ってけがをさせた
  • 相手を強く押したら転倒してけがをした
  • 相手をナイフで刺した、物で殴りつけて流血させた
  • 相手を怒鳴りつけたら鼓膜が破れた

つまり、「暴力を振るって相手が無傷だったら暴行罪、相手がけがをしたら傷害罪」と考えるとわかりやすくなります。

(3) 罪の重さと慰謝料の違い

暴行罪と傷害罪を比べると、傷害罪の方が重罪です。
刑罰の内容も、以下の通り傷害罪の方が重くなっています。

  • 暴行罪…2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
  • 傷害罪…15年以下の懲役または50万円以下の罰金

なお、暴行罪の「拘留」とは、1日以上30日未満の 身体拘束の刑罰(30日以上の場合禁固や懲役)、「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭支払いの刑罰(1万円以上なら罰金刑)です。

傷害罪と暴行罪を比べると、傷害罪の場合には「被害者の受傷」という重い結果が生じる分、刑罰も重くされています

加害者が被害者に支払うべき慰謝料や賠償金の金額も、傷害罪の方が多額になります。

2.傷害事件の慰謝料・示談金の相場

では、暴行よりも重罪とされる傷害事件の慰謝料や示談金の相場は、どのくらいになっているのでしょうか?

暴行罪の場合、相手はけがをしていないので「治療費や休業損害、逸失利益」などの損害は,原則発生しません(医師にけがの有無を診てもらうために生じる,一回程度の治療費と休業損害は除きます)。基本的に「慰謝料」のみを支払えば足ります。

一方、傷害罪では相手がけがをしているので、慰謝料以外にさまざまな損害が発生します。具体的には以下のような損害賠償をしなければなりません。

  • 治療関係費
    入院費、通院費、交通費、雑費、付添看護費用などです。
  • 休業損害
    けがによって働けない期間が発生すると、休業損害も払わねばなりません。
  • 逸失利益
    相手に後遺症が残って減収が発生したら、減収分も補償する必要があります。
  • 慰謝料
    相手は傷害によって大きな精神的苦痛を受けるので慰謝料を払わねばなりません。後遺症が残ったら、より高額な慰謝料が発生します。
  • その他後遺症関係の賠償金
    相手に後遺症が残って介護が必要になったら介護費用が損害となります。義足や義手などが必要になるケースもありますし、車の改造費用などを請求されるケースもあります。

傷害結果が重大になるほど賠償金は高額になります。
全治2週間 程度の傷害事件なら10~50万円程度で示談できる可能性がありますが、全治半年、1年などになってくると100万円以上の賠償金が必要となることも多いでしょう。

後遺症が残った場合、1000万円以上の損害が発生するケースもあります。

一方、暴行罪の慰謝料は、だいたい10~30万円程度です 。

【こちらもけがをしている場合】
相手だけではなく自分もけがをした場合、お互いに賠償金を払い合ったり、お互いに刑事告訴のやり合いをしたりすることも考えられますが,望ましいのは、互いに示談をして解決する方法です。その際には、双方のけがの程度に応じて賠償金の金額を決めます。
同程度のけがであれば、お互い慰謝料は支払わず被害届の提出や刑事告訴をしないという示談内容で良いでしょう。
相手のけがの方が重傷なら相手に差額を払い、自分のけがの方が重傷なら相手から差額を払ってもらいます。

3.傷害事件において示談が重要な理由

傷害罪の示談金が高額になるケースにおいても、被害者との示談は極めて重要です。

傷害罪の刑罰は最高15年と重くなっており、重大な傷害事件を起こすと実刑判決を受ける可能性も高まります。刑罰を軽くするには、被害者にきちんと賠償金を支払い、示談をまとめる必要があるからです。

次に、暴力事件で被害者と示談するとどのような効果があるのか、示談が成立するタイミングごとに説明をします。

(1) 逮捕前の示談

逮捕前に示談ができると、逮捕されずに済む可能性が高いです。

通常、暴行罪や傷害罪は被害者が警察に被害届を出すことによって捜査が始まります。しかし、示談できたら、被害者に警察に被害届を出さないようお願いすることも可能です。

また、警察が軽微な傷害事件の発生を把握していても、示談がまとまっているならあえて被疑者を逮捕しないでしょう。

(2) 逮捕後起訴前の示談

逮捕前に示談できず被害届を出されて逮捕されてしまっても、早めに示談するメリットがあります。

逮捕後勾留された場合、おおむね10日から20日以内に検察官が「起訴」するか「不起訴」にするか決定することが多いです。

起訴されたら刑事裁判となって裁かれますが、不起訴になったらその時点で釈放され、それ以上責任追及されることは基本的になくなります。

そして、被疑者が「不起訴処分」にしてもらうには、被害者と示談するのがもっとも近道です。
きちんと被害弁償を終えて示談が成立していると、被疑者にとって非常に「良い情状」として評価してもらえるからです。

傷害事件でも、起訴前に示談がまとまったら、不起訴処分にしてもらえる可能性が高くなります。

前科をつけたくないなら、起訴される前に示談を成立させましょう。

(3) 起訴後の示談

起訴されるまでに示談がまとまらず裁判になってしまっても、被害者と示談する意味があります。
示談が被告人にとって良い情状となるのは、刑事裁判でも同じだからです。

判決前に被害者と示談できれば、刑罰を軽くしてもらえる可能性が高いです。

実刑判決を予定されるケースでは、執行猶予がつく可能性が高まりますし、同じ実刑判決でも刑期を短くしてもらえるでしょう。

【傷害事件の示談における注意点】
傷害事件を起こすと、被害者から過大な賠償金や慰謝料を請求されて加害者が困るケースがあります。「逮捕されたくないなら払え」などと言って脅されることも珍しくありません。
その場合、被害者に「恐喝罪」が成立する可能性もあり、法外な賠償金を払う必要はありません。脅されたり要求額が過大だったりする場合、自己判断で示談せず弁護士までご相談ください。

4.傷害事件における示談は弁護士にご相談ください

被害者が顔見知りの人の場合、手紙やメールを送ったり、電話したり家に訪ねて行ったりなど、自分自身で謝罪をし、示談を申し入れることは可能です。

しかし、そうでない場合、被疑者が被害者と直接交渉をすることは難しいです。
また、被害者の被害感情が強い場合、顔見知りであってもなかなか交渉に応じてくれない可能性があります。

傷害事件を起こしたとき、被害者との示談は重要ですが、自分だけで進めるとトラブルも多発する可能性があります。

弁護士を間に入れると、弁護士ならば話を聞いてみよう、と思ってくれる被害者の方も多いです。

弁護士は、相手が重傷で高額な賠償金が発生する場合などには、分割払いを提案するなどして示談を進めます。
どうしても払えない場合には、被害者の心情に配慮した上で、事情を説明して減額を申し出ることも可能です。

傷害事件を起こしてしまい、逮捕されないかどうか不安な方、慰謝料や示談交渉でお悩みの方は、泉総合法律事務所所沢支店の弁護士にどうぞご相談ください。

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