自己破産の「免責」とは?
自己破産は借金を解決するための制度であり、裁判所で法律に則って行われる手続です。
法律というものは色々と難しいもので、一般人が日常生活で使わない言葉が多数出てきます。
あるいは知っている言葉でも、日常で使われる言葉とは違う意味を持っていることもあるでしょう。
さて、自己破産では「免責」という言葉が使われます。
免責という言葉自体は日常生活でも使います。
保険などのサービスの規約に「免責事項」という言葉が出てくるのを見たことがある人も多いはずです。
では、自己破産における免責とはどういった意味なのでしょうか?
自己破産を知るうえで重要な「免責」について、本記事でご説明します。
このコラムの目次
1.免責とは?
「免責」という言葉は、一般的に「責任を問われないこと」「責任を免れること」という意味で使われます。
しかし自己破産の世界では、ものすごく簡単に言うと「借金がゼロになる」という意味で用いられます。
自己破産の目的は裁判所から「免責」を許可してもらうことですが、これをわかりやすく表現すれば「借金をゼロにする許可をもらう」ということになります。
裁判所は法律に基づいて免責の許可を下します。
免責の許可が出たということは、「裁判所が法律に基づいて『借金をゼロにしていいよ』『もう返済しなくていいよ』という許可をしてくれた」ということです。
裁判所から免責の許可を得られれば、法律上極めて合法的に借金を帳消しにしてもらえたということなので、それまでのように借金の返済に頭を悩ませる必要がなくなります。
自己破産の最終目標である「免責」は、弁護士との打ち合わせなどでも頻繁に使う言葉です。
言葉の意味を忘れずに覚えておきましょう。
2.免責までの自己破産手続の概要
前述の通り、自己破産の目標は免責許可の獲得です。
しかし、免責を得る前には「破産手続」というものを経なければなりません。
自己破産の手続自体は「破産手続」と「免責手続」の2段階にわかれています。
一連の手続として行われるので意識することは少ないのですが、これらの手続はそれぞれ目的が違います。
どういった手続なのか、ひとつずつ確認していきましょう。
(1) 破産手続
破産手続は、債務者である破産申立人の財産を処分してお金に換え、そのお金を債権者へ平等に配るための手続です。
財産をお金に換えることを「換価処分」、債権者へお金を配ることを「配当」と呼びます。
自己破産は、ノーリスクで借金をゼロにしてもらえる制度ではありません。
「自分の財産をお金に換えて債権者へ弁済し、それでも足りない部分については借金を帳消しにしてあげます」というコンセプトに基づいた制度だと考えてください。
自己破産をすると裁判所が「破産管財人」という破産手続を実際に行う人を選任します。
破産管財人は申立人の財産を調査し、価値のあるものは売却してお金に換え、債権者へ配当します。
申立人が勝手に財産を処分すると財産隠しなどを疑われるので、破産管財人が責任を持って手続を進めるのです。
申立人は破産管財人の指示に従って、破産手続に協力する義務を負います。
「自己破産をすると、全財産を失うの?」と思う人がいるかもしれませんが、それは違います。
例えば家具家電などの生活必需品は基本的に処分されませんし、現金なら99万円まで、口座残高なら全ての口座を合わせて20万円まで手元に残せます。
基本的には、評価額が20万円を超えるものが処分の対象になると考えてください。
めぼしい財産がない人などは、一切財産を処分することなく破産手続が終わることも珍しくありません。
債権者に配当する財産がなく、かつ借金の原因に問題(「免責不許可事由」(後述))がないと思われる場合、裁判所は破産手続開始の決定をすると同時に、破産手続廃止の決定を行います(ここで言う「廃止」とは「終了」という意味です)。
開始と廃止の決定を同時に行うため、これを「同時廃止」と言います。
これに対して換価処分や配当を行う本来の破産手続を「管財事件」と言います。こちらが破産手続きの原則形態です。
管財事件よりも同時廃止の方が短期間で終わり、費用も少なくて済みます。
自分が自己破産をした場合に同時廃止と管財事件のどちらが適用されるのかを事前に知りたい方は、弁護士に相談して見込みを教えてもらうと良いでしょう。
(2) 免責手続
破産手続に続いて行われるのが免責手続です。
免責手続では「免責審尋」という、裁判官との面談が行われます。
所沢市を管轄するさいたま地裁川越支部では、同じ時期に自己破産する人が複数人集められて、集団面談の形で行うこともあるようです。
免責審尋では、本人の確認に加えて、借金の理由や反省点、現在と将来の生活状況についてなどについて質問をされます。
他にも「免責不許可事由」(後述)がないかを問われます。
虚偽を述べると大抵バレてしまい、場合によっては免責を許可してもらえなくなることもあるので、誠実に答えましょう。
裁判官は免責審尋の結果に加え、破産管財人がいる場合は管財人の意見などを踏まえて、免責を許可するかどうかを総合的に判断します。
特に問題がない場合、免責審尋が終わってから数週間後には免責許可の決定が行われます。
3.免責不許可事由について
免責不許可事由とは、「免責を許可してもらえない事情や理由」だと考えてください。
破産法には免責不許可事由が列挙されており、当てはまる人は借金を帳消しにしてもらえません。
(1) 免責不許可事由の例
- 借金の理由が浪費やギャンブル
- 自分に資産があるかのように見せかけてお金を借りた
- 財産を隠すまたは壊すなどして価値を減少させた
- クレジットカードで買った商品を返済前に安く転売し、他の債務の弁済に充てた
- 帳簿などを偽造した
- 債権者一覧表に虚偽を書いた、または一部の債権者を書かなかった
- 特定の債権者だけを優遇するような返済を行った
- 裁判所や破産管財人の手続に協力しなかった、または手続を妨害した
- 過去7年以内に免責を受けたことがある
これらの行為に心当たりがある人は、弁護士に相談して善後策を練る必要があります。
弁護士に言わずに隠したまま自己破産を進めると、後で大きなトラブルになる可能性があります。
(2) 裁量免責によって免責を受けられる可能性がある
免責不許可事由があっても諦めるのは早いです。
破産法には「裁量免責」という、その名の通り裁判官の裁量、つまり判断によって免責を許可できる旨の規定が存在します。
たとえ免責不許可事由がある場合でも、その程度が軽い場合や悪質ではない場合は、破産管財人の意見を踏まえて、裁判官が裁量で免責を許可してくれる可能性があるのです。
免責不許可事由があるにも関わらず、この裁量免責のおかげで借金をゼロにしてもらった人も大勢います。
ただし免責不許可事由がある以上、自己破産をするうえで不利になることは間違いありません。
反省の姿勢を見せたり、裁判所や破産管財人に積極的に協力したりするなどして、少しでも裁量免責をしてもらえる確率を上げましょう。
具体的に何をするべきなのかは、裁判所の運用に詳しい弁護士からアドバイスを受けることをおすすめします。
4.免責を得るために弁護士へ相談を
自己破産における免責とは、借金をゼロにしてもらうことです。
裁判所から免責の許可を得るために自己破産をすると言っても過言ではありません。
破産手続をしたのに免責を受けられなかった場合、単に自分の財産が処分されただけで終わってしまうかもしれないので、それを避けるために全力で挑みましょう。
もし免責不許可事由がある場合でも、適正に行動しさえすれば裁量免責を勝ち取れる可能性は残っています。
弁護士に相談して依頼すれば、免責を得られるように最善の手を尽くしてくれます。
確実に免責許可を得て自己破産を成功させるためにも、自己破産をお考えの方は、一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
-
2020年1月9日債務整理 自己破産するには|条件と事前の準備
-
2020年6月2日債務整理 自己破産をすると車は引き上げられてしまうのか
-
2020年1月10日債務整理 個人再生手続きに必要な書類を解説