交通事故

高次脳機能障害で後遺障害認定を受けるための資料のポイント

交通事故でなり得る、「高次脳機能障害」という後遺症をご存知でしょうか。

認知能力や行動管理、性格などに問題が起きる高次脳機能障害は、他人からはおろか被害者の方にとっても明らかにすることが難しく、賠償請求に必要な後遺障害等級認定を受けるには、十分な内容を持った資料を集める必要があります。

ここでは、高次脳機能障害で後遺障害等級認定を受けようとする方が、どのような資料を集めるべきか、どのようなポイントに注目すべきかを、分かりやすく説明します。

1.医師による診断書

高次脳機能障害にかかわらず、後遺障害等級認定では、医師の診断書は非常に重要です。

後遺障害とは損害賠償請求のための法律的な概念ですが、その具体的な内容を判断するには、医学の専門家である医師の判断は不可欠です。

それに加え、高次脳機能障害の後遺障害等級認定手続では、診断書は、そもそも高次脳機能障害の有無の審査をしてもらえるかどうかの判断にかかわってきます。

(1) 後遺障害診断書

後遺障害診断書とは、後遺障害等級認定のため特別に用いられる診断書です。
後遺障害等級認定には無くてはならない必要書類であり、その内容は認定に最も大きな影響を与えます。

高次脳機能障害の認定ではその重要性はさらに大きくなります。

高次脳機能障害の有無を審査するための振り分け条件として、後遺障害診断書の記載が非常に重要だからです。

(2) 経過診断書

経過診断書とは、通院中に毎月病院が作成して保険会社に送付している診断書です。

後遺障害診断書に高次脳機能障害そのものの診断がなくても、本人や家族に確認して症状が認められれば、専門的な審査へと振り分けられます。

経過診断書のなかで高次脳機能障害に関する診断名や症状の内容、原因となる脳の異常などがあるかどうかがポイントなのです。

【脳損傷に関わる意識障害は、経過診断書に記載されている 】
高次脳機能障害が後遺障害等級認定されるためには、交通事故で脳が損傷したことが大前提になります。脳損傷を直接証明する資料としては、次に説明する画像検査がありますが、事故直後に意識を失ったなど意識障害があったことも、脳の損傷を証明するために原則として不可欠な事実なのです。
事故直後の意識障害の有無は、後遺障害診断書ではなく、経過診断書の「初診時の意識障害欄」に記入されています。意識障害が少なくとも6時間以上続いていると、高次脳機能障害が残りやすいといわれています。

(3) 認定を受けるための診断書のポイント

診断名に高次脳機能障害と記載されていたとしても、具体的な中身がからっぽでは認定を受けられません。

後遺障害診断書の記載内容の中でも、後遺障害の認定条件を満たしていることを証明するためには、以下の記載が重要になります。

  • 高次脳機能障害の原因となるような傷病名
    交通事故により脳が器質的な損傷を受けていることが、後遺障害診断書ではっきりと記載されている必要があります。交通事故の物理的な衝撃で脳が傷つき、そのせいで高次脳機能障害が生じたという原因→結果の流れが必要だからです。
  • 日常生活への支障の状況など、高次脳機能障害の具体的な自覚症状
    高次脳機能障害の症状によって引き起こされる、日常的な社会生活の中で起きた問題が後遺障害診断書に記載されることによって、症状の程度が分かります。
  • 他覚症状及び検査結果
    医師から見た具体的な症状と程度、画像検査、知能検査など、より客観的な情報の記載が必要です。

2.検査結果

高次脳機能障害は、症状自体は「目で見える」ものではありません。

しかし、脳の器質的損傷が原因のものでなければ損害賠償請求はできませんから、結局、画像検査で損傷が認められるかは大きなポイントになります。

画像検査で明らかな異常があれば、認定に有利に働きます。
たとえば、脳の画像検査で異常があると経過診断書に記載があれば、後遺障害診断書に診断名がなくても高次脳機能障害として審査してもらえる可能性があります。

(1) CTやMRIなどの画像検査

画像検査には、基本的にCTMRIが利用されます。
初期に意識障害があればCT検査を受けていることも多いでしょう。しかし、脳内部を細かく判断するには、CTでは不十分です。

脳内の細かい損傷は、時間の経過とともに画像検査に移りにくくなってしまいますから、意識障害後に高次脳機能障害の疑いがあれば、MRI検査をしておいてください。

脳に傷がついているということが分からなくなっても、脳が縮む脳委縮が発生することがあります。CTやMRIなどで検査結果画像として残しておきましょう。

脳の損傷も、時間的経過に伴ってどう変化していったかが、高次脳機能障害の原因と言えるかどうかの判断に関わります。
事故直後や症状が出た後だけでなく、症状固定の時期になるまでは、画像検査を定期的に実施してください。

特に、交通事故から3か月以内に脳室の拡大や脳の萎縮があるかは重要視されています。

(2) 知能検査など

WAIS-Ⅲと呼ばれる検査など、知能検査などの結果も参考になります。

知能検査は、あくまで認知機能だけを検査するものであり、決定的な証拠になるわけではありませんが、認定の上で大いに参考になります。

他の重要な症状である行動障害や人格変化は、次に説明する被害者の方自身や周囲の方などの報告書が重要になるのです。

3.報告書

後遺障害等級認定の審査は、書類だけを参考とし、直接の面談による診察などを行わない書面主義により行われます。

そのため、高次脳機能障害の具体的な症状を審査機関に認めてもらうためには、高次脳機能障害の症状により実際に生じている日常生活を送るうえでの支障を具体的にわかりやすく記載した報告書を、作成する必要があります。

(1) 医師による報告書

後遺障害診断書に高次脳機能障害の症状それによる日常生活への支障の状況が記載されるほか、「頭部外傷後意識障害についての所見」と「神経系統の障害に関する医学的意見」を提出します。

専門家ですから、その意見は尊重されますが、一方で、被害者の方の行動や性格について短い診察の時間では把握しきれないことがあります。「もともとこういう人なんだろう」と思われかねないということです。

ですので、ご家族による日常生活の中での被害者の方の変化の報告が重要になります。

(2) 家族による報告書

日常生活状況報告」という報告書を提出します。

被害者の方の人となりを最も詳しく理解していて、かつ、事故の前後で被害者の方の認知能力や行動能力、性格にどのような変化が生じてしまっているのかを正確に把握できるのは、なんといっても生活を共にするご家族です。

症状がだんだんと回復して入っているが、事故以前には戻らない。この時系列が重要です。

被害者の方の言動に異常があれば、日付を付けて記録を残しておくと、具体的な報告書を作成できます。

(3) その他

報告書そのものではありませんが、似たような性質のものとして看護記録やリハビリ記録が重要な証拠になります。

看護師やリハビリの担当者は、医師よりも被害者の方により多くの時間をかけて触れあっていますから、医師が把握していない被害者の方の症状の内容を、事細かに記録してくださっていることがあります。

ほかにも、被害者の方がお子さんであれば、学校の担任の先生に「学校生活の状況報告」を作成してもらいましょう。

子どもにとり、学校は重要な生活の場であり、学校での勉強や友人関係に問題が起きていれば、高次脳機能障害による生活への支障と言えるからです。

4.まとめ

高次脳機能障害は、分かりづらいにもかかわらず、被害者の方の今後に大きな問題を与えかねない重大な後遺障害です。

高次脳機能障害の症状がみられるようであれば、できる限り後遺障害等級認定を受け、損害賠償金を手に入れる準備をすべきでしょう。

もっとも、高次脳機能障害の「分かりづらさ」は認定の上で大きなハードルとなります。認知機能の低下、性格の変化は、はっきりと明らかにすることは難しいためです。

法律の専門家である弁護士は、被害者の方の高次脳機能障害の具体的な状況について審査機関に確実に理解してもらうために、診断書や検査、報告書の作成や収集について、認定条件に沿った的確な助言をすることができます。

泉総合法律事務所は、これまで多数の交通事故の被害者の方をお手伝いしてまいりました。

関東に張り巡らした支店ネットワークと、経験豊富な弁護士が、被害者の皆様をサポートいたします。

高次脳機能障害に苦しむ皆様のご来訪をお待ちしております。

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