交通事故でヘルニアに!?後遺障害認定はどうなるのか
「ヘルニア」という言葉は、みなさんご存知かと思います。
具体的には、「体内の臓器などが本来あるべき場所からはみ出すこと」を「ヘルニア」と呼びます。
日常生活でよく耳にするヘルニアには、鼠径ヘルニア(脱腸)・臍ヘルニア(でべそ)・椎間板ヘルニアなどが挙げられますが、交通事故が原因で起こるヘルニアは、3つ目に挙げた「椎間板ヘルニア」がほとんどです。
今回は、交通事故とこの椎間板ヘルニア、またその後遺障害について、ご説明していきます。
このコラムの目次
1.椎間板ヘルニアについて
(1) 「椎間板」とは?
いわゆる「背骨」は1本の骨ではなく、椎体という小さな骨が連なって1つの柱のようになっています。この椎体の集合体を「脊椎」「脊柱」などと呼びます。脊
椎を形作っているそれぞれの椎体は、その位置によって「頸椎」「胸椎」「腰椎」などに分けられます。
椎体が連なっているといっても、椎体同士が直接くっついているわけではありません。
椎体と椎体の間には「椎間板」と呼ばれる軟骨が間に存在し、クッションのような役割を果たしているのです。
その椎間板が「本来あるべき場所からはみ出している状態」が「椎間板ヘルニア」です。
(2) 交通事故による椎間板ヘルニアの症状
交通事故の衝撃などによって椎間板の形が変わり、本来あるべき場所からはみ出してしまうことはよくあります。
はみ出した椎間板が神経を圧迫すると痛みやしびれの原因になりますし、神経の奥の脊髄まで圧迫すると、歩行障害などが起こる可能性もあります。
(3) 椎間板ヘルニアの種類
椎間板ヘルニアは、大きく分けて以下の3種類があります。
- 頸椎(首周辺)
- 胸椎(胸部~背中周辺)
- 腰椎(腰や臀部周辺)
頸椎椎間板ヘルニア
人間の頭部は非常に重いものです。その重い頭部が交通事故の衝撃で前後に揺さぶられ、それが原因で頸椎の椎間板が逸脱することがあります。
一般的に「むち打ち」と呼ばれるこの状態が「頸椎椎間板ヘルニア」です。
この状態になってしまうと、頸椎(首)を動かすと手や腕に痛みやしびれが出て、場合によっては衣服の着脱や食事(箸の使用)、筆記などに支障が出ることもあります。
胸椎椎間板ヘルニア
事故の衝撃で胸部の椎間板が損傷、逸脱した場合は「胸椎椎間板ヘルニア」です。
胸部より下の部分や下肢(脚)に力が入りにくくなり、下肢の筋力低下から排泄障害になることもあります。
脇腹や背中の痛みが出ることもありますが、痛みを感じない場合も多いとされています。
腰椎椎間板ヘルニア
事故によって車外に投げ出され、腰やお尻を地面などに打ち付けたりした場合、「腰椎椎間板ヘルニア」が発生する可能性があります。
症状として、まず腰や臀部の痛みが生じます。その痛みを避けようとしてゆがんだ体勢をとり、それが原因で側彎(脊柱がゆがんだ状態)になってしまう可能性もあります。
また、胸椎ヘルニア同様、脚に力が入らなくなり、排泄障害に繋がる場合もあります。
(4) 椎間板ヘルニアの治療法
実際に椎間板ヘルニアとなってしまった場合、どのような治療が施されるのでしょうか。
まず試みるのは「保存的治療」です。
- 装具(頸部カラーやコルセット、腰ベルトなど)の装着
- できるだけ動かず安静にする
- 鎮痛剤で痛みをコントロールする
- (鎮痛剤が効かない場合)神経ブロック注射で痛みを和らげる
- 専用の器具による身体の牽引
- マッサージ(必ず医師の指導の下に通う)
症状によってこれらを組み合わせたりして、症状が改善するのを待ちます。
保存的治療を続けても症状が快方に向かわない場合は、外科的治療、つまり手術を行うことがあります。
椎間板を切除する手術・金属などで骨を固定する手術など、症状によっていくつかの方法があります。また、最近では患者に負担の少ない内視鏡による手術を行う病院も増えてきているようです。
2.交通事故でヘルニアになった場合の損害賠償
椎間板ヘルニアはもちろん、交通事故で怪我を負った場合、以下のような損害賠償を相手に請求することができます。
(1) 治療費
怪我の治療にかかった費用のことです。
病院での診察代はもちろん、医師の指示の元で通った整骨院の施術費用や、各手続に必要な診断書作成費用等も含まれます。
(2) 慰謝料
交通事故に遭ったことで負った精神的苦痛に対する賠償金を「慰謝料」と呼びます。怪我の程度や入通院の頻度、期間などによって基準が変わります。
(3) 休業損害
交通事故が原因で収入が減った場合、その減少分を補填するお金のことです。
(4) 後遺障害慰謝料
「後遺障害が残った」という事実によって負った精神的苦痛に対する賠償金のことで、「(2) 慰謝料」とは別に算出されます。
(5) 後遺障害逸失利益
後遺障害が原因で減った収入を補填するものです。
「基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数」という計算式があり、それに数字を当てはめて計算します。
3.ヘルニアの後遺障害等級
治療後に後遺症が残った場合、「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。
後遺障害等級は第1級(最重度)から第14級(軽度)まで段階があり、それぞれの等級で後遺障害慰謝料の基準や、後遺障害逸失利益の計算に必要な「労働能力喪失率」が決められています。
つまり、適切な損害賠償を受け取るためには、「適切な等級に認定されること」が非常に大切になってくるのです。
(1) 後遺障害等級認定を受ける場合の前提条件
当然ではありますが、「交通事故で負ったヘルニアであること」が大前提です。
事故前にすでに椎間板ヘルニアになっていた、という場合もありますし、寛解していたヘルニアが事故をきっかけに再発・悪化した、という事例も少なくありません。
「交通事故が原因で椎間板ヘルニアになった」と証明するには、事故直後に詳細な検査を受けることが必要です。
正確な状況把握のため、整形外科でできるだけ専門的な精密検査を受けましょう。
(2) 椎間板ヘルニアで認定される等級
椎間板ヘルニアの場合、ほとんどが「神経症状」として扱われます。
後遺障害等級表において神経症状についての記述があるのは12級13号と14級9号です。
後遺障害等級12級13号と14級9号
等級表におけるそれぞれの記述は以下のとおりです。
12級13号:「局部に頑固な神経症状を残すもの」
14級9号:「局部に神経症状を残すもの」
痛みなどの症状が続いていることに加えて、「他覚的所見」がある場合、12級13号に該当する可能性があります。
他覚的所見とは、MRIなどの画像や腱反射テストの結果など、外傷性のヘルニアであることが明らかにわかる客観的な資料のことです。
一方、症状(痛みやしびれなど)が一貫して続いているものの、MRI画像や検査結果などにおいて、経年性のヘルニアとされる等、外傷性のヘルニアであることが認められない、ということもあるでしょう。
この場合は、「一貫して症状が続いていること」を証明できれば、14級9号が認められるかもしれません。
4.ヘルニアによる後遺障害等級認定のポイント
(1) 事故後はすぐに検査を受ける
ヘルニアに限ったことではないのですが、交通事故で怪我を負った場合、できるだけ早い段階で検査を受けましょう。
頸椎椎間板ヘルニアなどは事故直後ではなくある程度時間が経ってから痛みが出てくることがあります。その場合は「痛みを感じたらすぐ受診」を心がけてください。
これにより、交通事故と怪我(ヘルニア)との因果関係を証明しやすくなります。
(2) 治療中も適切な検査を受け、資料を準備しておく
レントゲンやMRI、腱反射テストの結果などから、外傷性ヘルニアの他覚的所見があれば12級13号の可能性があります。
後遺障害等級認定の際にはその資料が必要ですから、都度適切な検査を受けましょう。
(3) 受診のたびに症状をきちんと伝える
「事故後から一貫して症状が続いている」と認められる場合、MRI画像などの他覚的所見がなくても、14級9号として認定されるかもしれません。
受診の際はその時点での痛みやしびれなどの症状について、医師にきちんと伝え、記録として残してもらいましょう。
(4) 「被害者請求」という方法で認定申請する
後遺障害等級認定には2つの方法があります。
1つは「事前認定」と呼ばれ、保険会社が代理で手続を行うもの。もう1つは「被害者請求」と呼ばれ、被害者自身が行う方法です。
事前認定は保険会社が行うため、良くも悪くも機械的に手続が進みます。被害者としては手間が省けて便利な反面、「適切な等級に認定されるためのアドバイス」などは一切期待できません。
「被害者請求」は被害者自身が診断書や資料などを集める必要がありますが、やり方によって「適切な等級に認定されるための努力」が実を結ぶことも多くあります。
適切な賠償金を受け取りたいのなら、被害者請求で手続を行うべきです。
5.ヘルニアの後遺障害等級認定は弁護士にご依頼を
とはいえ、後遺障害等級認定の手続は、不慣れな人にとって非常にわかりにくいものです。
適切な賠償金を受け取りたいが、被害者請求の進め方に不安がある…という方も多いでしょう。
そんな方はぜひ、弁護士へご依頼ください。
弁護士は法律や交渉の専門家です。交通事故の賠償金の交渉はもちろん、後遺障害等級認定のサポートも可能です。自身で行うよりも、適切な等級認定の可能性が高まります。
また、弁護士が介入すると、慰謝料について「弁護士基準」という最も高い基準で交渉できるようになり、慰謝料の大幅な増額も見込めます。
椎間板ヘルニアはもちろん、交通事故や後遺障害などでお困りの方は、ぜひ一度、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
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