自己破産をすると車は引き上げられてしまうのか
急速な社会情勢の変化の中、仕事を失い収入が途絶える人、仕事はあっても収入減に苦しむ人が激増しています。
しかし、支払いは待ったなしでしなければなりません。どうしたら良いのか分からずに途方に暮れている方も多いと思います。
支払いがどうしてもできず、将来的にも返済の目途が立たないということであれば、自己破産を検討する段階にきています。
自己破産と聞くと怖いイメージがありますが、基本的には債務者を救済するための前向きな制度ですので、決して恐れる必要はありません。
ただ、自己破産にはそれなりに制約もあり、財産を処分されるという話も耳にします。特に車をお持ちの方はマイカーがどうなるのか気になることでしょう。
果たして自己破産をすると車はどうなってしまうのでしょうか?また、処分を免れる方法はあるのでしょうか?
このコラムの目次
1.自己破産について
最初に、自己破産の内容についてお伝えします。
自己破産とは、資産価値のある財産をお金に換えて債権者にできる限り返済し、それでも残った借金がある場合これを免除してもらう(免責)手続です。
(1) 借金がほとんどすべて免除される
借金の返済ができなくなったとき、法律的に借金を整理することを「債務整理」と言い、自己破産はそのうちの1つです。
債務整理は自己破産のほかに任意整理や個人再生があります。任意整理や個人再生は、基本的には、支払が免除になるわけではありません。これに対して、自己破産は、裁判所から免責を許可されると、原則として、ほぼ全ての借金を支払う責任がなくなります。
なお、「ほぼ全て」というのは、自己破産には免除を受けられない非免責債権があるからです。非免責債権とは、裁判所が免責について許可しても、免責されない支払い義務です。
非免責債権の代表的なものとしては税金があります。非免責債権は自己破産後も引き続き支払義務は残ります
また、非免責債権と同様に支払義務がなくならない財団債権というのもあります。
ただし、借金は基本的にはほぼ全て免除になるので、仮に支払義務があるものが残るとしても以前に比べれば支払いは楽になるでしょう。
(2) 財産は一部を除いて没収される
自己破産をすると借金はほぼ免除になりますが、その代わりに資産価値のある財産は没収となります。
とはいえ、自己破産をしても残しておくことができる一定の財産があります。その財産は「自由財産」といいます。
自由財産は99万円までの現金や生活必需品の家具等の差押禁止財産、債務者が破産手続開始後に新たに取得した財産である、いわゆる新得財産等が該当します。
また、この他にも自由財産となる財産があります。どの財産が、いくらまで自由財産となるかの基準については、各裁判所の運用によって異なります。
自由財産は自己破産で没収されないので、引き続き使い続けられます。
2.自己破産の車への影響
ここからは自己破産の車への影響について解説します。
車の取り扱いはローンの有無、また時価評価額によって取り扱いが変わってきます。
(1) ローン支払い中の車は原則として引き上げられる
ローン支払い中の車については、通常、所有権留保により車の所有権はローン会社にあるため、車は引き上げられてしまいます。
ローン支払い中の車に保証人がついている場合は、ローン会社から保証人に対して請求がいく可能性にも注意が必要です。ローン残高が多額の場合は保証人にも迷惑がかかりますし、保証人が支払えない場合は保証人も債務整理を検討する必要があります。
(2) ローン支払いが終わっていて査定額20万円以下なら残せる
自己破産では、資産価値が20万円を超える車は裁判所によって没収されますが、20万円以下の車は自由財産として扱われ、手元に残せることもあります。
よって、車のローンの支払いが終わっても、車の査定額が20万円を超える場合は没収されますが、20万以下の場合は手元に残せます。
ちなみに普通自動車の場合法定耐用年数が6年とされていますので、初年度登録から6年経過すれば価値なしと査定される可能性は高いですが、購入価額が高額の車は売却価額が20万円を超えることもあるので、実際の評価はケースバイケースとなるでしょう。
(3) 軽自動車の場合
軽自動車は法定耐用年数が4年です。
初年度登録から4年経過すれば価値なしと査定される可能性が高いです。
自己破産では、99万円までの現金等は自由財産として手元に残せることはお伝えしました。
原則、自由財産に当たらない財産は没収されますが、裁判所に対して「自由財産拡張の申立」をすることで、それ以上の財産を手元に残すことができる可能性があります。
処分されそうな財産があっても、諦めずに一度弁護士へご相談ください。
3.自己破産をする際には、借金問題に強い弁護士へ
自己破産ではローンの支払い中や資産価値が20万円を超える車は手放すことになります。
ローン支払い中であればローン会社に引き上げられることが多く、ローン支払い後も査定額が20万円を超えるのであれば裁判所によって没収されます。
ただし、法定耐用年数を過ぎていれば資産価値はゼロとみなされ、没収を免れる可能性はあります。普通自動車で6年、軽自動車で4年が目安ですので、新車をお持ちの場合は要注意です。
車に20万円を超える資産価値があったとしても、自由財産拡張により手元に残せる可能性は残っています。この辺りは弁護士に相談をすれば詳しい話を聞けるでしょう。
泉総合法律事務所所沢支店では、借金問題に強い弁護士が在籍しています。
車をお持ちの方は、自己破産後の生活について不安をお持ちだと思います。特に仕事や日常生活で車が必需品という場合はより深刻ですので、お一人おひとり事情を丁寧にお伺いした上で、最善の方法をご提案させて頂きます。
借金問題は対処が早いほど解決の選択肢が増えます。より良い解決を導くためにも、支払が出来そうもないと思った段階で速やかに弁護士に相談するのがベストです。
借金問題は一人で悩まず、どうぞお気軽に弁護士へご相談ください。
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